【2015.09.23】私たちは、安全保障関連法が「可決」されたとする採決に抗議し、その無効と、同法の廃止を要求します


 私たちは、安倍自民党政権の提出した安全保障関連法案が、2015年7月16日の衆議院本会議に続き、2015年9月19日未明、参議院本会議でも可決されたと称する事象に対して抗議します。

 

 従来主張してきましたように、この法律が容認する「集団的自衛権」の行使は、歴代内閣が違憲としてきただけでなく、法案審議の過程において、憲法学者・歴代の内閣法制局長官・最高裁判所長官など日本の法律のスペシャリストのほとんどが、こぞって違憲の疑義を呈してきたものです。この法律の違憲性は、単にそれを主張する人々の「人数」や「権威」等によってではなく、「学問的真理」の名において確実性ないし蓋然性をもつものであり、それを完全に無視する安倍政権を、私たちは大学人として看過するわけにはいきません。また、あらゆる世論調査においても過半数の人々が、今国会でのこの法律の成立について、拙速として反対していました。つまり多くの国民も納得してはいません。


 しかも、国会・委員会での審議および採決の過程も、民主主義国家としてふさわしいものではありませんでした。政府の答弁はひどいものでした。何を聞かれても同じような原稿を繰り返し読み上げていただけで「説明」にはまったくなっておらず、「イエスかノーかだけでお答えください」という質問に対しても長々と問われていないことを答え、野党側の限られた質問時間をどんどん食いつぶしてしまいました。「総理、お答えをいただいていません」「お答えになっていません」という質問者の発言が何度あったか、議事録上で数えてみるべきです。しかも政府の答弁が右往左往し、あるいは答弁不能に陥った結果、参議院の特別委員会だけで100回を超える審議中断がありました。11本の法律を2本にまとめていたことで、さらに審議の内容は薄くなりました。


 「採決」の際も、速記が止まっている中、委員でない与党議員や秘書等が不法に議場に乱入しスクラムを組み、野党議員の表決権や締めくくり質疑の時間と機会を奪いつつ、あっという間に「可決したことにし」ました。採決の公式記録もなく、地方公聴会の記録も議事録に残らない等というきわめて不自然な議事運営から見ても、この「可決」が本当に法的に有効なものであるかどうかについて、重大な疑義が生じるのは当然のことです。


 そもそも、2012年の自民党改憲草案には、国民主権を国家主権に戻し、基本的人権を義務との交換条件とし、平和主義を捨てる、という驚くべき内容が書かれていました。それは、近代立憲国家をやめます、という宣言に等しいものです。異例の内閣法制局長官人事、特定秘密保護法の成立、NHKへの人事や番組内容への介入、歴史修正主義的な教科書の採択運動、そして今回の安保関連法の「成立」、という一連の流れはまさに、平和な「戦後」を終わらせるものであり、日本を新たな「戦前」へとおとしいれようとするものです。戦後70周年である2015年に、このような内容の法律がこのような経緯で「成立」したことは、日本国の民主主義、立憲主義、平和主義すべてが、いままさに根底から脅かされているということを意味します。安倍総理は歴史に名を残したとお思いでしょうが、その名はただ「戦争を解禁した人物」として記憶されることになるでしょう


 青山学院は、戦争の経験への深い反省から再出発し、「平和国家」の理念を支える「地の塩」であり続けてきました。その私たちが、この法案や、それを推し進める安倍政権の方針を容認することは決してできません。「剣を取る者は、みな剣によって滅びる」(マタイ26:52)のです。もし戦うとすれば、他の国との武力での戦争ではなく、民主主義をもう一度作り上げていくために戦っていこうと私たちは考えます。
 私たちはこのような、民主主義をないがしろにする安倍政権の暴走に断固抗議し、この法律を廃止することを要求します。

 

2015年9月23日 平和と自由のための青山学院大学有志の会